感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
2 抵抗性感染
最も効果的な抗菌薬が,一定期間適切に投与された後も,熱発,白血球数上昇,CRP 高値などの感染所見が持続する場合は外科治療の適応である.薬物治療が奏功しがたい真菌,グラム陰性菌やMRSA を原因菌とする感染の際も,抵抗性感染の経過をとることが多く,それ単独で手術適応となる.しかし,抗菌薬療法による感染所見の消退の経過は一様でなく,「薬物抵抗性」をどの時点で判断するかは決して容易でない.多くの患者では3~ 7日で解熱するとされるが,微熱が続いたり,緩解後に再度発熱を来す場合があるので注意を要する.他にリスクが確認されない患者でも,微熱状態を含めて10日程度で,あるいは発熱が再発した時点で外科治療の適応としてよい.他方Staphylococcus aureus や耐性菌による人工弁置換術後感染性心内膜炎では,適切な薬物治療によっても弛張熱に変化がみられず,敗血症状態の改善が得られないことがある.このような患者では,より迅速に3日程度で外科治療の導入を判断する.また,感染性心内膜炎の確定診断に至らずとも,不明熱患者で急性の弁逆流が診断される場合には,他に感染症の原因がなければ,感染の持続と急性弁逆流をもって手術を考慮する.抵抗性感染の経過をとる患者の中には塞栓症の再発,心不全の増悪や新たな心雑音の出現など,弁膜病変の進行に基づく症状を呈するものも少なくない.さらに弁輪膿瘍や房室ブロックなど感染巣の弁輪への波及を認めることもあり,これらの所見や症状がみられる際には緊急的手術の適応である.
Ⅴ 外科的治療
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1 外科治療の適応と手術時期
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