感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
5 泌尿生殖器における手技・処置
 泌尿生殖器にかかわる手術,器具・装備の使用,診断処置によっても菌血症が発症することがある.尿路の手技・処置後における菌血症の発症率は,尿路感染症の存在下では高い.細菌尿を示す患者では,砕石術を含めた選択的手技の前には抗菌薬による尿路の殺菌を試みるべきである.

 人工弁がない場合にはグラム陰性桿菌による菌血症が心内膜炎の原因となることは稀であるが,致死的な敗血症の原因となることがある.従って,泌尿生殖器手技・処置の前には腸球菌だけでなく腸内グラム陰性桿菌などの尿路病原菌に対して有効な予防的抗菌療法を実施したほうがよい.これは,感染性心内膜炎の予防という意味合いではない.

 合併症のない経膣分娩後に菌血症が発症するのは,処置のわずか1 ~ 5%であり,正常分娩で感染性心内膜炎を発症することは稀である.その他の婦人科的手技においても,局所に感染がない限り,菌血症が発症する可能性は少ないとされているが,適切な予防を行うことを否定する根拠もない.

 いずれも,このような手技に対する抗菌薬の予防投与は,感染性心内膜炎の予防のためではなく,個々の疾患の合併症予防という広い視野に立ったものであると認識すべきである.

Ⅵ 予 防 > 2 どのような手技・処置が感染性心内膜炎のリスクとなるか > 5 泌尿生殖器における手技・処置

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