感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
4 ブドウ球菌(Staphylococci)
 Streptococcus viridansによる本症が,以前亜急性心内膜炎と呼ばれたのに対して,ブドウ球菌(典型的にはStaphylococcus aureus)や化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)などによる場合は,高熱や全身症状に強い炎症所見を認め,無治療では数日から数週間で死に至ることから急性心内膜炎と呼ばれていた.

①メチシリン感受性ブドウ球菌 (methicillin-sensitive Staphylococci)

 現在,ブドウ球菌の大部分がβ - ラクタマーゼを産生するのでペニシリンG やアンピシリンは多くの場合無効である.ペニシリナーゼ耐性のペニシリンであるnafcillinやoxacillinは国内では使用できないため,第一選択は第1世代のセフェム系薬(例,セファゾリン)となる(もしペニシリンG 感受性であればペニシリンG でよい).ゲンタマイシンを併用する.ペニシリンアレルギーではバンコマイシンを用いる.アレルギーの既往が明らかでない症例に漫然とバンコマイシンを投与することはしない.PVE の場合,抗菌薬の投与期間は6 ~8週間とし,ゲンタマイシンの併用期間を2週間とする.リファンピシンを併用することもある(次項参照).

②メチシリン耐性ブドウ球菌 (methicillin-resistant Staphylococci)


 代表的菌種はMRSAであるStaphylococcus epidermidisに代表されるcoagulase-negative Staphylococci(CNS:コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)においても,メチシリン耐性の場合はMRSA に準じて治療する.

 抗菌薬はバンコマイシンが第一選択となる.グリコペプタイド系薬では他にテイコプラニンがある.

 アミノグリコシド系薬を併用するPVE の場合,バンコマイシンの投与期間は6~ 8週間とし,アミノグリコシド系薬を2 週間併用する.さらにリファンピシンを2~ 6 週間併用することもある.

Ⅲ 内科的治療 > 2 原因微生物が判明した場合 > 4 ブドウ球菌(Staphylococci)

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