感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
2 原因微生物が判明した場合(表4,5,6)
表4 抗菌薬の選択-原因菌が判明している場合(自己弁)
表5 抗菌薬の選択-原因菌が判明している場合(人工弁)
表6 抗菌薬メモ:使用法と副作用・その他留意点
抗 菌 薬投 与 量期間
(週) 備 考
1)ペニシリンG感受性のStreptococcus[連鎖球菌(Streptococcus viridans,Streptococcus bovis,その他の連鎖球菌)]
[A] ペニシリンG 2,400 万単位(1,200 ~3,000 万単位) を6 回
に分割,または持続投与
4 高齢者や腎機能低下症例
[B] ペニシリンG+
ゲンタマイシン
ペニシリンG:[A]
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日
22
ペニシリンG 2 週間投与については本文参
照.ゲンタマイシンの投与回数については本
文参照.
[C] アンピシリン+
ゲンタマイシン
8 ~12g/日を4 ~6 回に分割,または持続投与
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日
42
[D] セフトリアキソン
±ゲンタマイシン
2 g ×1/日
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日
42
ペニシリン(PC)アレルギーの場合.
セフトリアキソンの代りにセファゾリンまた
はイミペネム/シラスタチンでも可.
[E] バンコマイシン1g ×2/日または15mg/kg×2/日
または25mg/kg/日(loading dose) →20mg/kg/日(維持量)を1 日1 回4 ペニシリンアレルギーの場合.血中濃度:ピーク=25 ~40μg/ml,トラフ=10 ~15μg/ml目安.
2)ペニシリンG低感受性のStreptococcus(連鎖球菌)
F] ペニシリンG+ゲンタマイシン:[B][A]
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg 2~3/日42 ~4[G] アンピシリン+ゲンタマイシン:
[C]8 ~12 g/日を4 ~6 回に分割,または持続投与+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日42 ~4
[H] バンコマイシン:[E][E] 4 ペニシリンアレルギーの場合.3)Enterococcus(腸球菌)[I] アンピシリン
+ゲンタマイシン:[C]8 ~12 g/日を4 ~6 回に分割,または持続投与+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2/日6
4 ~6ゲンタマイシンの1 日3 回投与,また6 週間投与については本文参照.[J] バンコマイシン+
ゲンタマイシン:
[E]
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日
4 ~6
4 ~6
ペニシリンアレルギーの場合.
4)Staphylococcus-methicillin sensitive(メチシリン感受性ブドウ球菌)[K] セファゾリン+ゲンタマイシン
2 g ×3 ~4/日+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日4 ~61セファゾリンの代りにスルバクタム/アンピ
シリンでもよい.その他イミペネム/シラスタチン2 ~4g/日.[L] バンコマイシン±ゲンタマイシン:[J]
[E]
±ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日
4 ~6
1
β- ラクタム系薬にアレルギーの場合.バン
コマイシンがセファゾリンより効果が高いと
いうことはない(本文参照).
5)Staphylococcus- -methicillin resistant(メチシリン耐性ブドウ球菌)
[M] バンコマイシン±
アミノグリコシド
系薬
[E]
±アミノグリコシド系薬(e.g. ゲンタマイシン
60mg or 1mg/kg)×2 ~3/日
4 ~6
1
テイコプラニンを用いる場合,バンコマイシ
ンよりさらに半減期が長い(TDM が必要).
アミノグリコシド系薬(アルベカシン含む)
については本文参照.
抗 菌 薬投 与 量期間
(週) 備 考
6)Streptococcus[連鎖球菌(Streptococcus viridans,Streptococcus bovis,その他の連鎖球菌)]およびEnterococcus(腸球菌)
[N]
[O][P]ペニシリンG+ゲンタマイシン:[B]アンピシリン+ゲンタマイシン:[G]
バンコマイシン+
ゲンタマイシン:[J]ペニシリンG:[A]+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日8 ~12 g/日を6 ~4 に分割,または持続投与
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日[E]+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日4 ~6
2 ~64 ~62 ~64 ~62 ~6Enterococcus では[O],[P]を選択する.7)Staphylococcus-methicillin sensitive(メチシリン感受性ブドウ球菌)[Q][R]
セファゾリン+
ゲンタマイシン:
[K]±リファンピシンバンコマイシン+ゲンタマイシン:[J]±リファンピシン
2 g ×3 ~4/日
+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日
±リファンピシン450 ~600 mg/日分1 ~2[E]+ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg×2 ~3/日±リファンピシン450 ~600 mg/日 分1 ~26 ~22 ~66 ~22 ~6セファゾリンの代りにスルバクタム/アンピシリンでもよい.ペニシリンアレルギーの場合.リファンピシンの効果については本文参照.
8)Staphylococcus- -methicillin resistant(メチシリン耐性ブドウ球菌)[S] バンコマイシン±
アミノグリコシド系薬:[M]±リファンピシン
[E]±アミノグリコシド系薬(e.g. ゲンタマイシン60mg or 1mg/kg)×2 ~3/日
±リファンピシン450 ~600 mg/日 分1 ~2
6 ~
2
2 ~6
テイコプラニンを用いる場合,バンコマイシ
ンよりさらに半減期が長い(TDM が必要).
アミノグリコシド系薬(アルベカシン含む)
については本文参照.
投 与 法副作用・留意点など
ゲンタマイシン1 回60mgまたは1mg/kgを2 ~3 回/日. 腎機能障害(可逆的),第8 脳神経障害(不可逆的)に
注意(特に高齢者).
血中濃度はピーク:3~5μg/ml,トラフ:<1μg/ml
と通常の有効血中濃度より低めでよい.血中半減期は
約2 時間.
セフトリアキソン1 回2g または1g(65 歳以上)を1 回/日. 血中半減期は8 時間と他のセフェム系薬より長い.
また,肝排泄型であり腎機能障害時も基本的に用量の
調節は不要.
バンコマイシン
または
テイコプラニン
バンコマイシン:1g ×2/日または15mg/kg×2/日
または25mg/kg/日(loading dose)→20mg/kg/日(維
持量)を1 日1 回を1 時間以上かけて点滴投与する(ヒ
スタミン遊離によるred man症候群を避けるため).
なおテイコプラニンでのred man 症候群発生頻度は低
い.
テイコプラニン:初回量(loading dose)400mg を2
~3 回/日投与.以後400mg を1 回/日30 分以上か
けて点滴投与する.
TDM は開始3 日後にまず行い,さらに4 日後(開始後
1 週間)に行い投与計画を立てる.
血中濃度はピーク:25 ~40μg/ml, トラフ:10 ~
15μg/mlを目安とする.血中半減期は約6 時間.
テイコプラニンの半減期はさらに長く(約50 時間),
TDM は投与開始7 日後に行う.血中濃度はピーク:
40μg/ml程度,トラフ:20μg/ml(できれば25μg/
ml)を目安とする*.
リファンピシン450 ~600 mg/日 分1 ~2 内服. ブドウ球菌(特にMRSA)に対して併用で使用される.
抗結核薬であり保険適用はない.ワーファリン使用時
は,代謝酵素の誘導によりワーファリンの効果が減弱
するため投与量の調整が必要.肝臓で代謝されるため
肝障害に注意.
Ⅲ 内科的治療 > 2 原因微生物が判明した場合
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