感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
3 疣腫の意義
 直径10㎜以上の疣腫を認める場合は,10㎜未満の疣腫の場合に比べて,塞栓症の率が20から40%へと有意に増加するという報告がある.特に,僧帽弁を侵し可動性のある直径10㎜以上の疣腫を有する場合,塞栓症の危険が高くなる.一方,疣腫サイズと塞栓発症との間に相関を認めなかったとする報告もみられる.

 効果的な抗菌薬治療後の疣腫の変化について,その意義を心エコー図だけで解釈することは困難である.3週から3ヶ月間効果的な抗菌薬治療を行い,心エコー図を繰り返した検討では,29%の症例では疣腫は検出されず,残りの症例の58%では不変,24%で縮小,17%で増大であった.疣腫の可動性・障害部位については,各々86%,65%で不変であった.このような疣腫の経時的変化は,治療期間,疣腫サイズいずれとも無関係であった.一方,治療に反応した症例の中で,疣腫が持続しているか,サイズの増加は,晩期の合併症の頻度と関係しているとする報告もある.他の臨床的・微生物学的事実がなく,効果的治療後に心エコー図で疣腫が観察されるからといって,感染性心内膜炎の再発と考えるべきではない.

Ⅱ 診断 > 3 心エコー図 > 3 疣腫の意義

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