感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
1 診断精度
 感染性心内膜炎診断における経食道心エコー図の感度・特異度は極めて高く,各々76~ 100%および94~100%である.また,人工弁置換例(特に僧帽弁位)では,人工弁の影響が少なく疣腫や弁逆流の検出がしやすくなる.人工弁感染例での疣腫検出の感度・特異度は,各々86~ 94%,88~ 100%である.また,感染性心内膜炎の重要な合併症である弁周囲膿瘍の診断において,自己弁でも人工弁でも,経食道心エコー図は経胸壁心エコー図に比べて優れている.弁周囲膿瘍の診断については,経胸壁心エコー図での感度・特異度は各々28%・98%に対して,経食道心エコー図での感度・特異度は各々87%・95%である.

 経食道心エコー図の診断感度は極めて高いが,1)疣腫サイズが経食道心エコー図の解像度以下である場合,2)すでに疣腫が塞栓を起こして以前にあった場所から消失している場合,あるいは縮小している場合,3)小さい膿瘍を検出するには十分な画像が得られない場合等により,偽陰性が生じる可能性がある.また,疣腫自体を,感染性心内膜炎による腱索断裂等と明らかに鑑別することは,経食道心エコー図を用いても必ずしも容易とは言えない.経食道心エコー図所見が陰性であっても依然として臨床的に感染性心内膜炎の疑いが強い場合は,必ずしも感染性心内膜炎の除外を完全にはできない .このような時は,1週間から10日後に経食道心エコー図を再度施行するのが望ましい.一方,経食道心エコー図と経胸壁心エコー図を組み合わせて両検査がともに陰性の場合は,陰性診断予測率は95%である.

Ⅱ 診断 > 4 経食道心エコー図の役割 > 1 診断精度

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