感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
7 脾梗塞,脾膿瘍,脾破裂
脾梗塞は左心系感染性心内膜炎によくみられる合併症である.その頻度は剖検では44~ 52%,CTスキャンや超音波による検討では19~ 35%との報告がある.これらのデータはCTスキャンを実施した症例の中での頻度であるので,臨床的に無症状の脾梗塞の例もあるため,実際はもう少し高い可能性がある.
左側腹部痛,背部痛,左上腹部痛は脾梗塞や脾膿瘍である可能性があり,腹部CTスキャンやMRI による画像診断が必要となる.これらの診断法の特異度と感度は90~ 95%と言われている.CTスキャン上では楔形状の欠損像が特徴的である.脾膿瘍はCTスキャンでは造影剤により増強される.脾膿瘍と脾梗塞の鑑別が困難なこともある.
一般に脾梗塞は抗菌薬治療により改善傾向を示す場合が多いが,それに対して脾膿瘍は抗菌薬治療のみの治療では根治は難しく,脾摘出術が必要となる.弁置換術とのタイミングでは原則として心臓手術に先立って施行すべきである.
脾破裂は脾梗塞の中でも最も稀な合併症である.脾梗塞により脾臓内に血腫が形成され,それが増大し被膜破裂を来すことにより起こると考えられている.破裂するとショック状態となり,速やかな治療を行わなければ致死的となる.
Ⅳ 合併症の評価と管理 > 2 心臓外の合併症 > 7 脾梗塞,脾膿瘍,脾破裂
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