感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
5 脳合併症を起こした場合の治療
感染性心内膜炎の経過中に脳合併症を起こした場合の治療方針はジレンマのあるところで,心臓手術をどのタイミングで行うかは問題である.最近の多数例の検討では,中大脳動脈領域の脳梗塞,脳出血や髄膜炎,脳膿瘍を合併した脳梗塞では,手術死亡率は高くなるが,それらの合併症のない例では,脳梗塞を起こしていない例と比べ,早期心臓手術における周術期の脳合併症の頻度や死亡率には有意差は認められないと報告している.また,Piperらは二次的な出血の危険性の低い
72時間以内の早期手術を勧告している.いずれにしても脳梗塞の重症度や合併症を評価し,重症心不全,再発性脳塞栓など外科的治療の適応のある場合は,対応可能な施設では早期手術を考慮する.これらも絶対的な勧告ではなくて,血行動態的に心不全の管理ができうる条件下では,可能な限り2週間を経てからの手術が
望ましい.(ページ17の
②
)脳合併症患者における手術適応を参照)(図3)非破裂脳動脈瘤に対する治療方針には一定の見解がない.心臓手術の前に脳動脈瘤に対するインターベンションを行わなくてもよいという報告もあるが,瘤の大きさや部位により判断すべきであろう.
図3 脳合併症を起こした場合の治療
注)
重篤な心不全などで緊急手術が必要な例では、対応可能な施設においては
脳梗塞発症72時間以内の手術を考慮する。
活動性感染性
心内膜炎
脳梗塞
所見なし
頭部CT検査脳内出血
2~3週間観察
脳血管造影
動脈瘤破裂
出血を伴う梗塞4週間観察
2~3週間観察
脳外科手術
(クリッピング
または動脈瘤切除)
髄膜炎疑い腰椎穿刺
髄液検査陽性
TIA 疑い遅滞なく弁膜手術
弁膜手術
Ⅳ 合併症の評価と管理 > 2 心臓外の合併症 > 5 脳合併症を起こした場合の治療
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