感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
1 内科的治療法
 小児は成人で推奨されている抗菌薬投与法に準じる(表18).人工弁置換術後感染性心内膜炎の際には,成人例では早期外科手術が死亡率を低下させるとされている.小児での多数例の検討でも同様の傾向である.小児での真菌性感染性心内膜炎の経験は少ない.心臓手術後,免疫抑制療法患者,新生児にみられることが多い.新生児では,静脈カテーテルの長期留置,広域抗菌薬の使用に起因することがある.
表18 抗菌薬とその使用法
腎機能正常な場合の小児の一日投与量:
ペニシリンG:20 万~ 30万単位/kg/日,分4~6
ゲンタマイシン:3~7.5 mg/kg/日,分3
バンコマイシン:40~60mg/kg/日,分4
セファゾリン:100mg/kg/日,分4
テイコプラニン:10mg/kgを12時間間隔で3回,以後10mg/kg/日30分以上かけ点滴静注.新生児 初回のみ16mg/kgを,以後8mg/
kg/日30分以上かけ点滴静注
セフトリアキソン:75~100mg/kg/日,分2
アンピシリン:200~300mg/kg/日,分4
リポ化アムホテリシンB 2.5~5mg/kg/日
ゲンタマイシンとバンコマイシンに関しては,定期的に血中濃度を測定し(TDM),投与量と投与方法を計画することが望ましい.
テイコプラニンの半減期は長く(約50時間),TDM はピーク:40μg/ml程度,トラフ:20μg/ml(できれば25μg/ml)を目安とする
起炎菌抗菌薬ペニシリンアレルギー
の場合投与期間 (週)
Streptococcus viridans
Streptococcus bovis
ペニシリンG±ゲンタマイシンバンコマイシンペニシリンG: 4 ~6ゲンタマイシン: 2バンコマイシン: 4 ~6アンピシリン±
ゲンタマイシンバンコマイシンアンピシリン: 4バンコマイシン: 4 ~6Staphylococcus aureus(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)
セファゾリン ±ゲンタマイシンバンコマイシンセファゾリン: 6 ~8ゲンタマイシン: 2
バンコマイシン: 6 ~8Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)バンコマイシン
(またはテイコプラニン)±ゲンタマイシンバンコマイシン: 6 ~8ゲンタマイシン: 2
テイコプラニン: 6 ~8グラム陰性菌,腸内細菌Enteric bacilliセフトリアキソンセフトリアキソン: 4 ~6
アンピシリン+ゲンタマイシンアンピシリン: 4 ~6ゲンタマイシン: 2
Haemophilus spp.
セフトリアキソンセフトリアキソン: 4 ~6
アンピシリン+ゲンタマ
イシン
アンピシリン: 4 ~6
ゲンタマイシン: 2
血液培養陰性(術後例) バンコマイシン±ゲンタ
マイシン
バンコマイシン: 6 ~8
ゲンタマイシン: 2
血液培養陰性(非術後例) セフトリアキソン
+ゲンタマイシン
セフトリアキソン: 4 ~6
ゲンタマイシン: 2
Fungus (真菌) リポ化アムホテリシンB リポ化アムホテリシンB: 8

Ⅶ 小児領域における特殊性 > 3 治療 > 1 内科的治療法

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