感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
2 外科的治療法
 成人と同様に感染性心内膜炎急性期の外科的治療は抗菌薬単独治療より有用であるとする報告がある.

 外科的治療法の適応は,心不全,不完全な感染コントロール,複数回の塞栓,真菌性感染性心内膜炎,人工弁置換術後感染性心内膜炎,進行性病変(弁周囲膿瘍,心筋膿瘍,伝導系異常),グラフトなど先天性心疾患術後例の人工材料感染である.成人と比べ弁置換後の生涯歴が長く,発育過程にある小児は置換弁の慎重な選択が必要である.人工弁サイズ,抗凝固療法(小児は外傷を受けやすい,妊娠時は催奇形性を伴う),生体弁の早期石灰化などの問題を勘案し置換弁を決定する.最近,大動脈弁感染性心内膜炎では,再感染予防,抗凝固療法不要の観点からロス手術が考慮される場合が多いが,この場合,右室流出路感染の予防が必要である.右心系弁修復の際の機械弁使用は小児では血栓形成が多く妥当でない.パッチ,導管など多くの人工材料が先天性心疾患の修復に用いられている(心室中隔欠損,右室流出路,右室肺動脈導管,肺動脈形成,Fontan手術など).人工材料感染,特に,ペニシリン耐性菌感染は予後が悪い.感染性心内膜炎を治癒させるために,感染人工材料の交換が必要となることが多い.心エコー図は人工材料感染性心内膜炎の感染診断に有用(パッチ上異物,パッチ輝度変化,パッチ辺縁不整など)とされるが,診断が難しい場合も少なくない.

Ⅶ 小児領域における特殊性 > 3 治療 > 2 外科的治療法

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