感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
Ⅰ 感染性心内膜炎とは
感染性心内膜炎は弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌集蔟を含む疣腫(vegetation)
(注1)
を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である.発症には,弁膜疾患や先天性心疾患に伴う異常血流の影響や,人工弁置換術後例等異物の影響で生じた非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombogenic endocarditis,NBTE)が重要と考えられている.すなわちNBTEを有する例において,何らかの原因により一過性の菌血症が生じると,NBTEの部位に菌が付着,増殖し,疣腫が形成されると考えられている.従って疣腫は房室弁の心房側,半月弁の心室側など逆流血流があたるところや,シャント血流や狭窄血流などの異常ジェット血流が心内膜面にあたるところに認められることが多い.
多くの場合,感染性心内膜炎は何らかの基礎疾患を有する例にみられるが,稀に心疾患の既往がない例に発症することもある.また静注薬物中毒患者では正常弁における感染性心内膜炎の可能性も考えておく必要がある.さらに小処置の既往なく発症する例や誘因のはっきりしない例も多く,疑わしい際には常にこの疾患の可能性を念頭に置いて診断にあたることが重要である.
注1)
本ガイドラインでは日本循環器学会用語集に則って「vegetation」という語に対し「疣腫」という訳語で統一した.
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