感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
1 症状
 小児では,右心系感染性心内膜炎が多いため三尖弁に付着する大きい疣腫例を除くと,塞栓症状が明らかでないことが少なくない.発熱を認めない場合もあるが,多くは中等度発熱で,午後に認められることが多い.非特異的症状(食思不振,元気がない,胃腸症状,関節痛,筋肉痛など)を認めることも少なくない.胸痛は年長児に多く,時に肺塞栓に起因する場合がある.脾腫は,亜急性例では認める頻度が高い.心雑音の変化あるいは出現は25%程度と低いが,小児は先天性心疾患を基礎疾患とすることが多く,既存の心雑音にマスクされるためと考えられる.神経学的合併症は,脳膿瘍,髄膜炎と誤診される場合もある. 古典的皮膚病変(Osler結節,Roth斑,Janeway発疹)は稀である.しかし,点状出血は少なくなく,口腔粘膜,結膜,四肢に認めることが多い.新生児乳児感染性心内膜炎は,呼吸機能悪化,凝固機能異常,血小板減少,軽度心雑音が主症状で小児期と比べ非特異的症状を呈する頻度が高く,より急性で敗血症に類似する.特に,新生児例は発熱を認めず,剖検ではじめて診断がつくことが少なくない.多くは静脈カテーテル留置,心臓外科手術に起因する(表17).
表17 小児感染性心内膜炎で認められる主要症状と頻度
症状頻度(%) 症状頻度(%)
発熱56~100 点状出血10 ~ 50
食思不振,体重減少8 ~ 83 塞栓症状14 ~ 50
倦怠感40 ~ 79 心雑音の変化9 ~ 44
関節痛16 ~ 38 ばち状指2 ~ 42
神経症状12 ~ 21 Osler結節7 ~ 8
胃腸症状9 ~ 36 Roth斑0 ~ 6
胸痛5 ~ 20 Janeway 発疹0 ~ 10
心不全9 ~ 47 爪下線状出血0 ~ 10
脾腫36 ~ 67

Ⅶ 小児領域における特殊性 > 2 診断 > 1 症状

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