感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)
Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis(JCS 2008)
 
 
1 総論
 小児の感染性心内膜炎は,複雑先天性心疾患と成人期先天性心疾患に多い.一方,新生児,乳児例も増加している.小児期心内膜炎の診断基準はない.先天性心疾患の病態,血行動態が多岐にわたるが,生命予後予測因子は.乳児,大きな疣贅(>20㎜),心不全,ブドウ球菌感染である.

 小児心内膜炎では,成人と比べ,左心系よりも右心系心内膜炎の頻度が高いため,非特異的症状が少なくなく,心不全,塞栓症状の頻度も低い.低年齢の小児では,採血が困難な場合があり,血液培養回数が少ない.また,真菌心内膜炎は成人と比べ少ない.小児では左心系心内膜炎,弁輪部感染が少ないこと,経胸壁心エコー図の見やすさなどから,経食道心エコー図の使用が少ない.抗菌薬治療は成人に準じて行うことが多いが,副作用も少なく概ね良好な結果を得ている.左心系心内膜炎が少なく,人工弁感染が少ないが,右室流出路形成術,大動脈肺動脈吻合術,欠損孔閉鎖術などに用いる人工材料感染が多く,急性期に心臓外科適応となることは少なくない.小児は両親に依存するため予防は比較的確実に行われるが,思春期以降は予防が十分ではないとされている.

Ⅶ 小児領域における特殊性 > 1 総 論

次へ